平成21年10月 金ヶ崎町 小野まり子さん インデックスページへ戻る
金ヶ崎町 小野まり子さん
岩手日報随筆賞で最優秀賞を受賞した、金ヶ崎町で酪農を営む小野まり子さんにお話を伺いました。

小野さん

 「あの出来事は人生の中での大きな危機。だからこそ、書いておけば自分自身の『財産』になると思ったんです。でもまさか賞を頂けるなんて夢みたいで…」。


正賞のブロンズ像「エリカ」は
故舟越保武氏の制作


一昨年には佳作入選。
今年の最優秀賞に「夢のようでした」

 岩手県内の随筆家の発表の場である「啄木・賢治のふるさと『岩手日報随筆賞』(岩手日報社主催)」。今年度の最優秀賞を受賞したのが、金ヶ崎町で酪農を営む小野まり子さんだ。受賞作「牛飼い、再び」は、経費高騰などから一旦は牛を手放すことを決めたものの、牛への愛情と父母から受け継いだ酪農への思いに奮起、再スタートするまでをつづったもの。廃業という「危機」を乗り越え希望をつないだ結末は、選考委員の胸も打った。「賞は関係なく、私にとっては日常を書きとめてゆくのが大切なの。その積み重ねが、人の心も動かしたのかな」。そう小野さんは振り返る。


現在は小野さんが経営者として
牛舎を管理している


現在は子牛4頭を含む17頭を飼養

 原野を開墾する両親の姿をみながら、牛を遊び相手に過ごした子ども時代。夜、ランプの下で父が話してくれた様々な知識は、しっかりと小野さんの記憶に刻まれているという。それが「書く」という行為に昇華したのは、JA岩手ふるさと勤務時代に広報誌の担当になったことによる。「やるからには中途半端はできない」と週末ごとに水沢の文章教室に通い、書き方の基本を学んだ。その後は胆江地区の文章サークル「銀のしずく」に所属し、今も月2回の活動には必ず自作を持って参加している。「講評してもらうのが一番の勉強。それに書くことが気晴らしにもなるし」。今回の最優秀賞受賞は、まさに日々の積み重ねの先に手にした栄誉だったといえるだろう。


金グシでブラッシング。
牛も気持ちよさそうに目を細める


黒板には各牛の名前が。
牛の個性も大切にしている

 今、小野さんの毎日は酪農が中心だ。朝と夕の搾乳はもちろん餌をやり、牛舎の管理もこなし、牛たちの様子に気を配る。「一頭一頭みんな性格が違うんですよ。大変なこともあるけど、働けるうちは働かなくちゃ。家族もみんな手伝ってくれるしね」。そんな牛舎の仕事や家事が終わる夜9時からが、小野さんの執筆時間。広告チラシの裏に思いつくまま一気に書き推敲を重ね、原稿用紙に書き写す。「推敲は3回程度で終わらせる。少ないかもしれないけど、推敲すればするほど私が書きたいものから離れていってしまう気がする」と小野さんはいう。昔の暮らし、両親からの教え。日々の中でふとよみがえる記憶を大切に受け継ぎ、伝えていく言葉に余計な飾りはいらない。


「絞るからね」「ありがとうね」。
言葉に込めた感謝と愛情に牛も応える


自家製の粗飼料で飼養。
採草などには家族も協力してくれる


水田の管理も小野さんの仕事。
忙しい日々だ


今年の初夏に生まれた子牛。
小野さんの姿を見るや乳をねだる

 受賞の反響は大きく、友人知人はおろか見知らぬ人からの手紙も届き、新聞掲載日には電話が鳴り止まなかったとか。自分のことのように喜ぶ人々の激励に「涙が出るほど嬉しかった」と小野さんは微笑む。酪農も執筆も必要に迫られてやってきた。しかし妥協せず、ひとつひとつ実績と信頼を積み重ねてきた時間が今を支えている。「それが女性の底力。小さいことの積み重ねが大きいことにつながっていくと思うんです。これからも、見たまま感じたままを自然体で素直に書いていきたいと思っています」。小野さんの酪農と執筆の“二足のわらじ”生活は、これからも続いていく。


友人知人、恩師からも激励の手紙が届いた。小野さんの宝物だ


この地を開拓し、生活の基盤を
築いたお母様、ナエ子さんと一緒に

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