平成21年7月 久慈市 はしかみ桂水会 インデックスページへ戻る
久慈市 はしかみ桂水会
はしかみ桂水会のメンバー。前列左より、大久保哲さん、障子上イクさん、関口ミツエさん。後列右より、清水川カツさん、伊藤重子さん、韮山良さん、宇部サトさん

はしかみ桂水会のみなさん

 梅雨のはしりの冷たい雨に見舞われた土曜。町並がひっそり静まり返る中で、久慈市の山間集落・端神(はしかみ)郷にある桂の水車広場は、翌日の祭り「くるま市」に向け、にわかな活気に満ちていた。


作業場所になっている石神座。
板間の横には厨房がある


軍配餅用の団子作り。
1本1本ていねいに作る

 活気の中心は、広場の施設「ふる里伝承館 石神座(いしかくら)」の厨房だ。小麦粉に熱湯を注ぎ、軍配餅用の団子を作るのは大久保哲さんと関口ミツエさん。土間口の板間では、障子上イクさんと伊藤重子さんが田楽豆腐に使う大量のニンニクを刻んでいる。隣の工房では宇部サトさんと清水川カツさんがそば生地を足で踏みきたえ、韮山良さんが伸した生地を切る。「昔は節句や不祝儀のたびに集まって作っていた。今は祭りのためにもやるようになったんだ」。額に流れる汗をいとわず、上気した頬に笑顔をたたえながら作業にいそしむ「はしかみ桂水会」のメンバー。見る間に出来上がっていく山里のご馳走が、受け継がれてきた食文化の豊かさを教えてくれる。


そばぎりの生地は足で踏んでコシを出す。
昔からのやり方だ


昔ながらのそばぎり。シイタケ・煮干し・
昆布の出汁がとても合う

 昭和63年、端神郷の広場に復元された水車に地域の人々は沸き立った。「また、この水車で粉をつくにいいんだなって。本当に嬉しかった」。食を預かる女性たちの喜びはひとしおで、やがてほかから訪れる人々に手作りの料理を提供するように。そこから味の伝承グループ「はしかみ桂水会」が結成され、平成元年には食をテーマにした「水車祭り」が行われた。そして翌年からは毎月第1日曜に「くるま市」を開き、5月と11月には「水車祭り」が行われるようになった。以来21年間、ふたつの祭りは同会のメンバーと地域の人々の協力で休まずに続けられている。


自家製豆腐と野菜の旨味。
昔懐かしい味わいの煮しめ


甘いくるみダレを塗った軍配餅と、
にんにく味噌が香ばしい田楽豆腐

 祭り当日の朝は、料理の総仕上げ。昨日仕込んだ軍配餅とそばぎり(そば)、祭りの定番であるゆかべと田楽豆腐、煮しめ、うきうき団子に加え、今年採れた葉を使ったよもぎ餅やウルイの漬物など季節の味も登場する。また広場のテントでは地域の人たちが、イワナの炭火焼きや米粉とヒエ粉を団子にした焼きシトギを作っている。「祭りは老人クラブや部落会と一緒にやってるの。出店には山菜から野菜や餅菓子なんかも並ぶ。みんな『次は何を出そうか』って色々考えるのが楽しみでね」。そう話す韮山さんは、今回は「ゆかべ」の担当。自家製大豆をすりつぶした呉汁から豆乳を絞り、にがりをさっと加えるとあっという間にふわふわの豆腐が出来上がる。大豆の旨味が濃厚で、しかも口中でほろほろ溶けていく感覚は初めての体験だ。


ゆかべ作り。大釜に湯を張り、
呉汁に火を通していく


渾身の力を込めて豆乳を絞る。
すべて熟練の仕事だ

 「これが食べたくて、毎回1時間もかけて来るのさぁ」。1番乗りのお客さんが待ちきれぬ様子で熱々の椀に口をつけ、作業を手伝う韮山さんの娘さんも「ばあちゃんのを食べたら他の豆腐は食べられなくなる」と太鼓判を押す。確かに、こんなうまい豆腐は食べたことがない。
 それにしても山深い端神の地に、これほど豊かな食文化が生まれたのは何故だろう。「端神には二十二もの神様がいて毎日のように節句があるから、そのたび集まって料理を作ってきたのさ」と関口さんはいう。そう、ここでは風習や伝統は守るものではなく、日々の営みとして自然に行われてきたものなのだ。「私らも旦那も幼なじみ同士。もう家族みたいなもんだしね」。大久保さんの言葉に笑顔でうなずくメンバーに、山峡で寄り添い暮らしてきた人々の結びつきの強さがにじむ。


淡雪のような食感と
豆の旨味が凝縮したゆかべ


「これが食べたくて来た」とお客さん。
祭りでは6升ものゆかべを作る


年2回の「水車祭り」では、
あわ餅のお振舞も行われる


「まず、食べてみて」。
出来立てのよもぎ餅はふわふわ

 気がつくと、厨房や工房の前には行列が出来ていた。5月と11月の水車祭りの時には、広い駐車場がいっぱいになるほど大勢の人が詰めかける。ここには素朴でうまい料理があり、美しい自然がある。なにより、ふるさとの原風景というべき端神の暮らしそのものが多くの人を魅了するのだ。
 「だから、これからも続けていければと思ってる。身体と相談しながらねぇ」。そういって微笑む桂水会の7人。大らかなその笑顔に会いたいから、何度も足を運んでしまうのかもしれない。
 「くるま市」「水車祭り」とも開催は4月から12月までの毎月第1日曜日、時間は10時~14時。


軍配餅は炭火で焼いて熱々を提供。
これも大人気


祭り開始の1時間近く前から常連客が次々に訪れていた

「はしかみ桂水会」の場所と連絡先

住所:岩手県久慈市山根町端神1-28 桂の水車広場 ふる里伝承館・石神座
TEL:0194-57-2172(石神座)

案内図
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