鮭は岩手県の海の幸を代表する魚のひとつ。最漁期の晩秋から冬にかけ、三陸沿岸の港にはたっぷりと脂がのった鮭が水揚げされる。県内の小中学校では11月の「鮭の日」に合わせて旬の鮭を取り入れた「鮭の日給食」が毎年実施されているが、調理法や組み合わせる食材は地域によってさまざま。今回は大槌町学校給食センターを訪問、海のまちの鮭の日給食を体験した。
実は大槌町と鮭の関わりは深い。新巻鮭は江戸時代に大槌城主が考案したと伝えられ、鮭の一本釣りやつかみどりなどは大槌の冬の人気行事になっている。もちろん家庭でもよく食べられており、大槌の子どもたちにとっても馴染み深い食材だ。「だからこそ焼き鮭など基本料理を中心に、新しい味を知ってもらえれば」と話すのが学校栄養職員の伊東有加さん。さまざまな調理法で、鮭はもちろん三陸の豊富な海の恵みを子どもたちに食べて欲しいと工夫を凝らしている。

お客さまと一緒の給食には
ちょっと緊張? |

鮭についても
じっくりと勉強したよ |

白菜たっぷりのみそ汁も
残さず食べました |
この日の献立は、ご飯、白菜のみそ汁、鮭の甘酢あんかけ、昆布の煮付け、りんご。
カリッと香ばしく揚がった鮭に合わせる副菜や汁物には、大槌の食材がたっぷり。「この献立には地場産物が使えるかどうかを考える」と話す伊東さん、野菜類は釜石・大槌地域農産物等直売所グループと相談して旬のものを積極的に取り入れる。すき昆布も大槌の特産で、煮物は懐かしい郷土料理のひとつ。手間はかかるが、昔ながらの家庭の味も食べさせたいという伊東さんの思いには13人の調理員さんがしっかり応えてくれるとか。このチームワークも、美味しさの理由だ。

大槌漁協の孵化場長を務める
黒沢勉さんは鮭博士! |

手間ひまかかる調理も「お任せ!」の調理員さんたち |

「魚食や郷土料理のよさも伝えたい」と学校栄養職員の伊東有加さん |
吉里吉里小学校で行われた「鮭の日給食会」には、加藤宏暉大槌町長をはじめたくさんの来賓が招かれ、6年生と一緒に給食を食べた。いつもと違う雰囲気にちょっぴり緊張気味のみんなも、大槌町漁業協同組合の黒沢勉さんが持ってきた立派な鮭には大歓声。「鮭の卵は一匹からおよそ2500粒とれる」「鮭はタラやカレイと同じ白身の魚」「大槌川に遡上する鮭は特に鼻が曲がっている」など黒沢さんが教えてくれる鮭についての話には、あちこちから「へえーっ!」「知らなかった」の声が飛び交うほど。ふだん食べ慣れた鮭について、じっくり知識を深めた給食タイムになった。

上野芳江さん。「不揃いだけど
新鮮で美味しい野菜を出してます」 |

手前の苗はキャベツ。
ハウスと露地を切り替えながら野菜を作る |

3回の土寄せでじっくり育てた自慢の長ネギ |

給食納品の取りまとめを行う
事務局の阿部敬一さんと一緒に |
釜石・大槌地域農産物等直売所グループの事務局を務める阿部敬一さんの案内で、大槌地区の上野芳江さん宅を訪れた。キュウリやなばな、キャベツや花き類などさまざまな作物を作っている上野さんの畑では、給食にも登場した長ネギが収穫シーズン。大槌は「市日」が多く、「昔は女性たちがリヤカーで小売りに行く姿が見られた」と上野さんは懐かしむ。給食への納品が始まったのは6年前で、阿部さんは「今じゃ『ジャガイモといえば上野さん』なんですよ」と頼もしげ。かくいう阿部さん自身、休耕田を利用したそば栽培、中学校での講演会などさまざまな食農活動を行っており、「中学生の中には農業や酪農の仕事に興味を持つ子もいるようです」と微笑む。
海の幸、里の恵み。大槌の子どもたちは地域の魅力について給食を通してしっかり学んでいる。 |