「うわ〜、きれいだなあ!」。荷受けカゴ一杯のサクランボに思わず声があがる。その間にもミニトマト、レタス、キュウリ、ホウレンソウ、キャベツ…次々に納品される農産物のなんと多いこと。
「今日は食材ほとんどが一戸産の給食だから、いつもの10倍くらいはあるんじゃない」。額に汗を光らせながら荷下ろしをする野菜生産者の女性が話す。「ハクサイも露地物だよ。標高が高くて涼しい奥中山で作ってるから」と教えてくれたのは、もうひとりの男性生産者。ここ県北の一戸町では、気温が上がる6月頃から農産物の種類が増えてくるという。そんな時期を考慮して一戸町食育センターが行っているのが「ふるさと給食」。7月と11月の年2回、一戸らしい食材や郷土料理を加えた献立が町内の小中学校などで食べられている。
この日の献立は、一戸産「いわてっこ」のご飯、味噌汁、二戸産鶏肉の香草焼、野菜サラダとミニトマト、サクランボ。
夏のふるさと給食の主役はやはり野菜。献立を作る栄養教諭の千葉文絵先生は「旬の美味しさを色々な調理法で味わってほしいから」と思いを話す。「やっぱりレタスは一戸町の特産だから」と調理員さんもうれしそう。また千葉先生は「塩分や糖分がないから献立も立てやすく、バランスもいいんです」と米飯食の長所も教えてくれた。一戸町の給食は、日本伝統の食事スタイルのたいせつさを子供たちに伝える役割を果たしている。

千葉文絵先生。「地場産品を使い、
日本の食事のよさを伝えたいですね」 |

「あーおいしそう、いただきます!」。
全校一斉の挨拶が校舎に響く |

一戸のサクランボは
大粒で甘くておいしい! |

レタス生産者の岡本さんから
栽培について聞きました |
給食会が行われた小鳥谷小学校は、全校あげて食育活動に取り組んでいる。地域農家の協力で行っている農産物作りも、サツマイモやメロン、大豆そして米と実に豊富だ。この日はサクランボ生産者の小姓堂京子さんとレタス生産者の岡本恒造さんが学校を訪れて、6年生と一緒に給食を味わった。普段から農業に取り組んでいる子供たちは、ふたりの話す栽培の工夫や苦労話にも興味津々。「他にどんな野菜を作ってるの」「保存はどうしてるの?」などさまざまな質問も飛び出した。「今日の給食のレタスとサクランボはとても美味しかったです!」。ごちそうさまの挨拶と感謝の気持ちをしっかり伝えた子供たちに、小姓堂さんと岡本さんもにっこり。

小姓堂さんは「佐藤錦」と
「紅秀峰」をメインに栽培 |

実にまんべんなく光が当たるよう、葉を輪ゴムでくくる |

小姓堂京子さん。「給食には食べ頃で見事なサクランボを出します」 |
小姓堂京子さんのサクランボ畑は、小鳥谷の集落を見下ろす山の斜面にある。たわわに実る深紅の大粒は、小鳥谷産の佐藤錦「夏恋(かれん)」。甘みも色づきも抜群なのは、堆肥と米ぬかを使う栽培法やていねいな葉摘みのたまものだ。一方、岡本さんのレタス畑は平糠地区の山あい、ぽっかりと開けた場所にあった。「野菜は苗の良し悪しで決まる」と種まきから吟味し、3月から7月まで27回も収穫を行っている。ともに早朝の収穫から休む間のない忙しさだが「子供たちに食べてもらうのだから手は抜けない」と、日々の仕事に精を出す。
野菜を作る人の思い、調理する人の願い。子供たちの身体と心を健やかに育む給食の向こうには、たくさんの人々の努力と情熱があった。

岡本さんは作付けローテーションを行い、11月までレタスを収穫 |

「苗の時にきちんと根を作るのがいい玉を作るコツ」と岡本さん |

岡本恒造さん。「子供たちに食べてもらえるのが励み」 |
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