ほんのりキツネ色をしたコッペパン。よく見ると全体に散らばっている微細な粒々は、雑穀のアマランサスである。「普通は粉ですが今回は粒のまま使用しました。トッピングのさるなしジャムは、試作で評判のよかったバタークリームとのブレンドです」。軽米町学校給食センターの主任学校栄養職員、大村孝子さんが教えてくれた。アマランサスもさるなしも、ともに軽米町の特産品。このパンは、大村さんら関係機関が学校給食用に開発した地産地消パンなのである。
国内有数の雑穀生産地・二戸地方では、地域が一体となり雑穀の普及拡大を推進中。生産体制の整備をはじめ、雑穀を使ったメニューの考案など、さまざまな取り組みや事業が行われている。軽米町では雑穀に加えマタタビ科の果実・さるなし加工品の振興にも力を入れており、今回は「いわて食財の日」に合わせ、町内の学校給食のメイン食材として使用されることになった。

唐揚げもセンターでひとつずつ手揚げしている |

イナキビの鍋にはつきっきり。
とろみがついたら完成 |

「手前は栄養職員の大村孝子さん(左)と調理員の下斗米友子さん。後ろ左から、調理員の小笠原利夫さん、竹沢福子さん、細谷地テルさん、中野文子さん、日山光広さん |
この日の献立は、特製のさるなしジャムパン、磯スープ、若鶏の唐揚げ、イナキビ入りジャーマンポテト、デザートのりんご。
軽米の学校給食に雑穀が登場する頻度は週に1回以上。アワ・ヒエ・アマランサスの雑穀ミックスと軽米産米「いわてっこ」を炊き合わせた定番のご飯をはじめ、イナキビ入りのドライカレーやアワ入りの鮭シチューなどメニューも多彩だ。この日はとろりと煮たイナキビをジャーマンポテトに加え、彩りも栄養価も抜群の副菜に。「つぶ感やとろみを生かしたりと、雑穀は使い勝手のいい食材」と大村さんはいう。さらに今回は唐揚げの鶏肉やスープの豆腐や野菜、デザートのりんごも軽米産を調達。「地場産品の消費を増やすには、子供たちの食生活を変えていくことが大事。給食から家庭料理へと、地域の食べ物のたいせつさを広げていければ」と、大村さんは願っている。

元気給食会が開かれた小軽米小学校 |

5年生に雑穀について紹介する
生産者の工藤孝一郎さん |
小軽米小学校の5年生の教室では、山本賢一軽米町長はじめ来賓を招いた「元気給食会」が開かれた。山本町長の「軽米では町ぐるみで地産地消に取り組んでいることを、みんな家庭で伝えてくださいね」とのメッセージに続き、大村さんからの献立紹介や雑穀生産者の工藤孝一郎さんのお話も聞いた子どもたちは、いつも以上にふるさとを意識しながら給食を食べた様子。「軽米のものをもっと食べたくなりました」「パンもジャムも軽米らしい」などの感想が発表された。

こちらは藤田博範校長先生と。
小軽米小では古代米栽培を実践 |

給食を食べながら軽米の農産物のことも聞きました |

やっぱり人気の唐揚げ。元気にパクリ |

ジャーマンポテトをおかわり。
「まだ残ってる?」 |

「これ、なあに?」。他の学年の児童も雑穀の束に興味津々 |
岩手県北は畑作の歴史が長く、かつては馬産地としても知られた地域。冷涼な気候に耐える雑穀は人々の命を守り、ヒエわらなどは馬の飼料になった。その歴史から雑穀と大豆の輪作体系が生まれ、また粗飼料を得るため完全無農薬栽培が大前提だったという。アマランサスを中心にイナキビやエゴマも栽培する工藤孝一郎さんも、そんな地域の“伝統”をたいせつに守っているひとり。化学肥料をほとんど使わず天日干しで仕上げたアマランサスは品質のよさで知られている。

ふわふわのアマランサス入りパンに甘酸っぱいさるなしジャムをサンド |

アマランサスに取り組んで10年の工藤孝一郎さん。「伝統を守っています」 |

軽米産の雑穀は品質の良さに加え種類も豊富 |
現在、軽米の雑穀生産量は年間150トン余りと二戸地方の4割を占めるまでに増え、生産者約260名の中には30代の若手もいるという。給食や学校で雑穀文化を学んでいる軽米の子どもたちにも、きっと地域の伝統が引き継がれていくことだろう。 |