きりっと冷えた空気のなか白い湯気をあげる鍋。中には、昨日から浸水していた小豆と古代米がことこと踊っている。その加減を見ている間にも、奥の納品口には次々と野菜が届く。ハクサイに長ネギ、ほうれんそう、だいこん…。どれも、地元の一関中里地区でとれたものばかりだ。

生産者が毎朝納品。顔の見える安心感 |

中里産の小豆は主菜に使用。じっくりと炊き上げる |

寒い冬の朝。調理室いっぱいに湯気が立ちのぼる |
「野菜はほぼ100%が地元産で、1年を通して納品してもらっています。種類も多いですし、このへんは土質がいいからどれも美味しいんですよ」。一関市立中里小学校の学校栄養職員、佐藤恵美子さんが教えてくれた。自校式で約200食の給食を作っている同校では、地区内の生産者と契約を交わして毎日野菜を納品してもらっている。常時出荷する生産者は11名程とそれほど多くはないが、みなが地区内の顔見知りゆえに心が通じ合っているのが強み。「いいものを出荷してくれるし、『これ使ってみて』と野菜を持ってきてくれる方も。温かい気持ちをいつも感じています」と佐藤さんはにっこり。「いわて食財の日」にあたっていたこの日の給食は、野菜はもちろん小豆や古代米まで一関産。気持ちのこもった食材を前に、調理員の阿部たま子さんと佐藤美由紀さんも「手抜きをすると美味しくならない」と、丁寧に下ごしらえをすすめていく。

中里小では地域のお年寄りと野菜も栽培している |

「今日の給食も美味しいです」みんなでパクパク |
この日の献立は、古代米ご飯、なめこ汁、鮭のホイル巻き、のり和え、デザートのりんご。
「中里地区は三世代同居家庭が多いからか、子どもたちも和食が好きなんです」と佐藤さん。多彩な献立や味付けはもちろん「食事にはバランスも大事なことを給食で学べるように」と、主食・主菜・副菜・汁物という和食のスタイルを崩さないように心がけている。また月1回は地元の生産者を学校に招待し、子どもたちと一緒に食べてもらう給食会を開催。この取り組みで全員が生産者を知ることもでき、「安心して給食を食べているような気がします」という。

米飯給食は週3回。自校だから混ぜご飯も思いのまま |

「和食は大好き!」おいしい顔をパチリ |

「ごちそうさまでした!」みんな残さず食べました |
そんな生産者の一人、小野寺謹一さんを訪ねた。磐井川の堤防そばの畑には、見渡す限り一関特産の曲がりネギ「やわらか美人」が植えられている。小野寺さんは、平成元年に仲間とともに曲がりネギ研究会を結成し、6年後には生産部会を立ち上げて産地化に取り組んできた。「いいネギを作るには、種を守るのはもちろんだが完熟堆肥をたっぷり使うのも欠かせない。土寄せも最低3回は行わなくちゃならないから手間ひまはかなりかかる」と、今もなお品質を高めるための努力を惜しまない。柔らかな土の中からずぼっと引き抜くと、強い香りとともに手塩にかけた曲がりネギが現れた。その太さ、そして瑞々しさ! 「学校へはできるだけいいものを出すようにしている。『美味しかったよ』と言われるのが何よりの張り合いだね」と、小野寺さんは朗らかに笑う。

小野寺謹一さんの畑。川沿いの砂地は長ネギ栽培の適地 |

甘くて柔らかい「やわらか美人」は県外でも大人気 |

ベテラン栽培者の小野寺謹一さん。「今年のネギは特別太くて美味しいよ」 |
中里小の給食タイムは、どのクラスを訪れても元気いっぱいでにぎやか。「中里の給食は美味しいんだよ!」と口々に話す子どもたち、おかずが残っていると知ると次々におかわりに立ち、食缶はあっという間に空っぽに。「いつも手作りで本当に美味しい。給食は中里の『宝』なんですよ」と、佐々木敏男校長先生も胸を張る。佐藤さんも「残さず食べてくれるのは、先生方が中里の素晴らしさをきちんと教えてくれているお陰です」と、とてもうれしそうだった。
野菜を作る人、給食を作る人、その取り組みを伝える先生たち。地域の強い結びつきが、中里小の子どもたちの身体も心もすこやかに育んでいる。

美味しい給食を作る調理員の阿部たま子さん(右)と佐藤美由紀さん |

学校栄養職員の佐藤恵美子さん。
「顔が見えるのが中里のいいところです」 |
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