三陸海岸の南に位置する大船渡市は、県下有数の魚介類の水揚高を誇る町。季節の便りも春一番のワカメにはじまり夏はウニやホタテ、そして秋のサンマなど、豊かな海からやってくる。秋から冬にかけては「牡蠣」が最も美味しくなるが、大船渡市漁協では全漁連が制定した「かきの日」に合わせ市内の小・中学校に牡蠣を無償提供し、漁食の普及と漁業への理解を深める取り組みを行っている。全国トップクラスの品質のよさで知られる大船渡産の牡蠣がどんな献立で登場するかを楽しみに、碁石半島にある市立末崎中学校の給食調理室を訪れた。

届けられた牡蠣は地元末崎産のもの。
おいしそう! |

末崎町の小学校と中学校合わせ485食を作る |
冬にも関わらず、早朝の調理室は色とりどりの野菜で溢れている。そのほとんどが地元の生産者から届けられたものだ。「末崎では、50年以上も前から地域農家の皆さんが育てた野菜を給食に提供してもらっているんですよ」と、学校栄養職員の佐藤京子さんは胸を張る。しかも春のホウレンソウに始まりタマネギやニンジン、キュウリなど種類も実に多い。佐藤さんも「なんでも食べることで健康が作られることを子どもたちに伝えたい」と、さまざまな野菜を積極的に利用している。

「いつも美味しい野菜をありがとうございます」。
手紙の贈呈 |

初めての牡蠣の給食。「プリプリしてておいしい」 |
この日の献立は、かきの土手鍋風、五目きんぴら、納豆とご飯、デザートには温州みかん。
海のミルクといわれるほど栄養価の高い牡蠣だが、好き嫌いの分かれる食材でもある。そこで今回は野菜をたっぷり入れた味噌仕立ての汁物に。味噌で牡蠣のクセを抑えつつ、旨味とプリプリ感を楽しめるようにした。副菜の五目きんぴらはシャキシャキのヤーコンやこんにゃく、さつま揚げなど食感の違いが面白い。多彩な食材を使うぶん調理の手間はかかるが、4人の調理員さんのチームワークはばっちり。野菜類の下処理から出汁作りまで、手作りにこだわっている。

船上でのワカメの糸巻き作業。
「楽しい」との声も続出 |

収穫、塩蔵加工したワカメは芯抜作業もみんなで行う |

修学旅行先の都内のスーパーで販売。いつも完売の人気 |
末崎中のある末崎地区は「養殖ワカメ発祥の地」として知られている。学校ではそんな地域の産業を学び、海と暮らしていくことを学ぶための授業「産土(うぶすな)タイム」を設定。1年生はワカメの種付けや収穫体験を行い、2年生では自分たちで加工したワカメを修学旅行先の東京都内で販売、そして3年生は海を守る森での植林体験と、じっくり3年をかけての取り組みを続けている。「ワカメを柱にして人とふれあい、収穫や加工、販売を通して仕事のやり方を学ぶ。それが生徒一人ひとりの自信や誇りになり、将来は海に関わる仕事をしたいと話す子もいます」と、成果を語る櫻田靖三校長先生もうれしそうだ。もちろんこの日の給食にも、生徒が作った「ふれあいワカメ」を使用。野菜生産者の平野敏子さん、志田雅子さん、上部敦子さんを招いた給食タイムでは2年生から3人に感謝の手紙も送られた。自分たちで体験し、また生産者とのふれあいを通し、末崎中の生徒達は地域の豊かさと学ぶ喜びを知り、生きる力を身につけている。

茎ワカメもおいしい末崎中自慢の「ふれあいワカメ」 |

手前右から栄養職員の佐藤京子さん、調理員の里舘こず恵さん、後ろ右より小笠原リト子さん、佐藤いるさん、菅野秋子さん |
朝一番に野菜を届けてくれた平野光輝さんと敏子さんは、学校給食の始まりとほぼ同時期から食材供給を続けてきた。中学校から車で5分ほどの場所にある畑では、ブロッコリーやハクサイなどが収穫の時期。ここは大船渡湾を見下ろす高台にあり、あまり雪は降らないが冬は冷たいからっ風が吹く。「だから風対策をして、きちっと土を作っておけば虫もつかず病気にもならないですよ」と敏子さん。野菜とともに丹誠込めた露地いちごも、近々給食に登場する予定という。場の恵みと人の恵みが、末崎のおいしい給食を支えている。

平野光輝さんと敏子さんの畑。
四季を通し様々な野菜を作っている |

露地のイチゴは実が締まって甘みも酸味もあると大評判 |

平野光輝さん。地域の5組の仲間農家と給食納品を続けてきた |

野菜生産者のみなさん。左から、志田雅子さん、上部敦子さん、平野敏子さん |
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