高級食材として知られるキャビアの親魚、チョウザメの養殖が行われている釜石市。すでに市内では刺身などでチョウザメ肉を味わえる飲食店もあるが、家庭の食卓に登場することはまだ少ない。そんな「新しい特産品」チョウザメを子どもたちに食べてもらおうと、釜石市立学校給食センターではこの8月、白浜小学校で「チョウザメって、どんな魚?みんなで食べてみよう!〜いただきます、釜石の特産品〜」と題した、ユニークな給食会を行った。
センターで給食会に向けた準備が始まったのは6月から。チョウザメを飼育する釜石キャビア株式会社から無償提供を受けたフィレ肉を使い、料理試作を行い関係者で試食。評価の高かった「チョウザメの酢豚風」が献立に決まった。「自分の暮らす場所で行われている取り組みを、給食を通して知らせていくのが私たちの役目」と、センター所長の川崎悦三郎さんは思いを話す。

チョウザメのフィレ。淡白な味わいで料理法を選ばない |

出汁巻き玉子も手作り!これも小規模校ならではのよさ |

今年3月上旬に行われたワカメ刈り。仕分けは全校児童で |
この日の献立は、チョウザメの酢豚風、出汁巻き玉子、ワカメとキャベツのツナ味噌サラダ、ごはん。
市街地と離れている白浜小では、センターから届く献立を元に校内で給食が調理されている。学校栄養職員の井伊芳さんは「できるだけ多くの食材を使い、様々な調理法があることも伝えたい」と献立を構成。今回のチョウザメも抵抗なく食べてもらえるよう角切りにしたフィレを油でカラリと揚げ、甘酸っぱい味付けにした酢豚を考案した。副菜のサラダは、毎年センター主催で行われているアイデア料理コンクールで白浜小の父兄から応募のあったレシピを採用。そのサラダに入れたワカメも、子どもたちが養殖から塩蔵加工まで手がけたもの。これは地元の漁業関係者の指導のもと30年近く続けられている白浜小伝統の体験学習で、製品は毎年地域の老人ホームへも贈呈されている。「箱崎白浜のワカメは最高。ワカメが嫌いな子は一人もいませんよ」と、給食担当の高橋せつ子先生も微笑む。

浜茹でしたのち塩蔵加工。今年11月頃には一般発売も予定 |

学校農園では給食用にジャガイモやニンジンなどの野菜を栽培 |

持ち込まれたチョウザメの稚魚をスケッチする1年生 |
ほかにも、秋になると父兄から届けられる新鮮なサンマを塩焼きはじめ様々な調理法で提供したり、学校菜園で収穫した野菜もふんだんに使っている。「子どもたちも地域の食材をよく知っていて給食を楽しみにしています」と、井伊さんも嬉しそう。小規模校だからこそできる手づくり、そして地域に密着した食材や調理法の採用も、給食センターと白浜小の緊密な連携あってこそ。地産地消そして食育が自然に行われている、理想的な例だ。

白浜小の子どもたちはみんな地域の漁業を見て育ってきた |

「チョウザメはどう?」子どもたちともおなじみの井伊さん |

給食を残さないのは当たり前。「私もおかわり!」 |
給食タイムでは、まず釜石キャビアの吉田桂一さんによるチョウザメの説明が。2億年前から存在する魚であること、そしてチョウザメはサメではないとの話に「ええ〜っ!!」と声があがる。「どのくらい生きるの?」「何を食べているの?」など様々な質問も飛び出し、みんなチョウザメについて理解を深めた様子。「初めて食べるから…」とちょっぴり不安そうだった児童も、一口食べて「美味しい!」とパクパク。おかわり組も出て、あっという間に食缶が空っぽになった。

釜石市立学校給食センター所長の川崎悦三郎さんと栄養職員の井伊芳さん |

美味しい給食を作る、調理員の小林修さん |

釜石キャビアでは稚魚から食肉、キャビアまで一貫生産している |

「地元で作ったものを地元で消費してほしい」と吉田桂一さん |
市内にある釜石キャビアの飼育場のひとつを訪れた。チョウザメは淡水で生育するが「水がよくなければ美味しい魚はできない」と、同社では北上山地からくみ上げる豊富な地下水を使用して飼育。キャビアは有名だが、「肉もアミノ酸やEPAやDHAがとても豊富で、本場ロシアでは長寿の魚として知られているんですよ」と吉田さん。栄養バランスに加え安心安全にこだわった自慢のチョウザメを地元の子どもたちが「美味しい」と食べてくれたことが一番うれしかったと微笑んだ。
今回をきっかけに、釜石市内の全学校でチョウザメ給食が提供される日が待ち遠しい。
|