大きなボウルに入った黄色い「いなきび」の粉に、熱湯をかけてこねていく調理師さん。しっとりとまとめた生地は手のひらで丸め、真ん中にくぼみをつけた小さな団子にしていく。本日の一戸町の学校給食は、岩手県北地域に昔から伝わるおやつ「へっちょこだんご」を中心にした郷土食の献立。「団子まで手作りは初めてですが、普段から『一戸らしさ』を意識した献立を作っているんですよ」。一戸町食育センターの学校栄養職員の猿館たゑ子さんが説明してくれた。

調理師さんの中にはへっちょこだんご作りの達人もいる |

3種の色合いが楽しい。茶色のたかきび団子以外は手作り |

小・中学校や幼稚園など合わせ1300食以上の給食を作る |
一戸町は、冷涼な気候を生かしたレタスなど高原野菜の栽培や酪農がさかんな地。また雑穀に代表される、昔ながらの食文化が今も受け継がれている。センターでもへっちょこだんごはもとよりアマランサスなどを混ぜた雑穀ご飯を炊いたり、地域のパン業者に依頼してジャージー牛乳などを使った給食パンも開発。さらに施設内にある「食育ホール」では夏休みや冬休み期間を利用して、懐かしいおやつづくりなどの親子料理教室も開催。「毎年、親御さんから作り方を教えて欲しいとリクエストが出るほど好評です」と猿館さんはいう。給食はもとより、ここ一戸町食育センターは町が力を注いでいる食育活動の情報発信ステーションとしても活用されている。

猿館さんは雑穀の穂を見せながら献立の説明をした |

野菜がたっぷりの煮しめも好評。量は足りたかな? |

「へっちょこだんごもウマいっす!」
ふたりでぱくりっ |

とびきりの美味しい顔をパチリ。
みんな明るくて元気 |
この日の献立は、へっちょこだんご、煮しめ、酢の物、いなきび入りのパン、ミカン。
へっちょこだんごはいなきびのほか、もちあわ、たかきびの3種類の団子入り。「普通は米粉ですが、きび粉を使うのがセンターのこだわり」と猿館さん。この日は熱湯で茹でたのち小豆汁に入れたが、「直接小豆に入れると、雑穀のとろみが加わって絡みがよくなります」と、もう一人の栄養職員の吉田牧子さんが教えてくれた。ジャガイモやニンジン、フキやワラビなども入った煮しめも、一戸では昔からよく食べられてきた家庭の味。さっぱりと味付けされた酢の物のダイコンは、一戸町の産直「サラダボウル・こずや」から今朝納品されたもので、「平成20年度からは雑穀も納品してもらえるようになります。地元のものがやっぱり一番ですね」と猿館さんらも期待している。

調理師さんは全員が一戸町の方。
地域の味はお手のもの |

一戸らしい献立を作る学校栄養職員の吉田牧子さん(左)と猿館たゑ子さん |
サラダボウル・こずやは、平成12年にオープンした産直。一戸町産にこだわった新鮮な農産物と加工品の多彩さで、県外からも買い物客が訪れる。組合長の穴久保松江さんは「美味しい農産物を食べてもらいたい」と、およそ60人の組合員とともに今も土作りや野菜作りの勉強を続けている。そんな生産者の努力と情熱は目には見えないが、美味しさにちゃんと現れている。

「サラダボウル・こずや」にて。手前左より、村中啓一さん、道地八重子さん、小姓堂京子さん。後ろ左より、中村タチエさん、穀蔵美智子さん、柴田静雄さん、組合長の穴久保松江さん、岡本恒造さん |

雑穀から野菜や果物、加工品まで豊富な品揃え |

レジ当番も生産者が交代で。
顔の見える安心感も人気の理由 |

国道4号沿いにある人気の産直
「サラダボウル・こずや」 |
センターに隣接する一戸中学校での給食タイムは、2年1組の生徒たちが猿館さんから雑穀の話を聞きながら会食。郷土食のへっちょこだんごも煮しめも「おいしい」と好評だった。昨年、男子体操部が東北大会で優勝するなど運動部の活躍が光る一戸中だが、美味しくて体にもいい給食が日々の体づくりに果たしている役割は小さくないだろう。
|