一関市立弥栄小学校の給食時間の合図は「かおり」。お昼近くになると、給食調理室から完成間近の給食のいいかおりが、校舎から校庭にまで漂い出す。
「かおりを感じるのも食べる楽しみのひとつ。これが自校給食のいいところです」。そう話すのは、学校栄養職員の新沼妙子さん。作る給食は児童と教職員合わせ85食。しかも小規模のよさは、手作りへのこだわりのほか食材調達にも生かされる。野菜の多くは地元の産直「いやさか直売所」のものを使い、ときに地域の生産者から直接納品されることも。そのため地場食材は通常でも50パーセント近い利用率になるという。弥栄小では、毎日が地産地消給食のようだ。

大豆と梅干しも「いやさか直売所」の品 |

梅干しの種と一緒に炊いた御飯は香りもいい |

いものこ汁の仕上げ。おいしそうなかおりが漂い出す |
この日の献立は、ひじき梅ごはん、いものこ汁、サンマの塩焼き、からしあえ、ぶどう。
弥栄産の梅干しや青大豆などが入ったまぜご飯は美味しい上に彩りも鮮やか。いものこ汁の野菜のほとんどと、からしあえの小松菜、デザートのぶどうも弥栄産だ。「この地域は野菜農家が多いので、子どもたちは野菜をよく食べてくれます。また三世代同居も多いからでしょうか、和食も人気があるんです」と新沼さん。毎年5月の「青空給食」と10月に行われる「もみじ給食」では、校庭に広げたシートの上で会食できるように給食を弁当箱に詰めるなど、献立はもちろん食べ方にも工夫を凝らし、子どもたちに楽しい食体験を提供している。

給食当番の児童。あいさつはきちんと、そして元気いっぱい |

机を合わせて給食タイム。おしゃべりしながらパクパク食べる |

炊飯も自校だからまぜご飯もいろいろ。「今日のご飯もおいしい!」 |

「写真とって〜!」はいピース! 男の子たちはいつも元気 |

「できるだけ色々な料理を食べさせたい」と学校栄養職員の新沼妙子さん |

児童には「エミさん」と慕われている調理師の小野寺エミさん |
4時間目が終わると、調理室前の配食室に次々と給食当番の児童がやってきた。「3年生です、いただきます!」「今日の給食おいしそうー!」。子どもたちには新沼さんも調理師の小野寺エミさんもとても身近な存在で、あいさつはもちろん授業の様子を話していく児童もいるのだとか。「食べている様子もすぐに見に行けます。なにより『美味しかった』と、直接言ってもらえる瞬間がとてもうれしい」と微笑む新沼さんは、時間があれば教室に出向いて栄養指導も行っている。おいしいかおりに加えこんなふれあいの数々も、食べる楽しみになっているに違いない。

「いやさか直売所」の佐々木則子さん(左)と千葉本子さん |

千葉本子さんの畑は直売所すぐ近く。これからの季節は白菜が旬 |

午前中で商品はほぼ売り切れるが、直売所は地域の交流拠点にもなっている |

右から、「いやさか直売所」会長の佐々木則子さん、小野良子さん、千葉本子さん |
野菜を提供する「いやさか直売所」は20年以上の歴史を持つ県内産直のさきがけ的存在で、会長の佐々木則子さんら農家女性7人で運営。「弥栄の野菜だけ」「消費税なしの100円売り」という設立以来の取り組みが評判で、午後には商品がほぼ売り切れる人気ぶりだ。給食センターとの取り引きは5年ほど前からで、週に2度、新沼さんが直接出向いて注文をしている。「子ども達にかせる(食べさせる)のだから気が抜けない」と話す佐々木さん。新沼さんが話す給食の様子には実にうれしそうな表情に。弥栄小の給食を支えているのは、地域のつながりと人々の思いだ。
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