一関市立赤荻小学校は、東北自動車道一関インターから車で5分たらずの場所にある。すぐそばには住宅地もあるが、学校の周りは緑鮮やかな田んぼや畑。ここ赤荻一帯は有名な「曲がりネギ」や里芋などの主要産地のひとつなのだ。これからの季節なら、ナスやトマトなどの夏野菜が畑の主役。赤荻小の子どもたちは、日々変化する田園風景を見ながら登校している。

一関地方独特の「油麩」は夏の間だけ作られる限定品。香ばしさとコシの強さが持ち味だ
|

1本1本ていねいに千切りする。手切りは味が違うと先生も絶賛するとか
|

ひじきやピーマンも入り、彩りも栄養バランスもよいきんぴらごぼう
|
給食にも、そんな地域の恵みがひんぱんに登場する。「子どもたちに野菜を通して、旬を教えることができれば」と話すのは赤荻小の学校栄養士、阿部惠美子さん。野菜の持ち味を生かしながら、ひと手間をかけたりシンプルに仕上げたりと工夫を凝らした献立を作っている。特に地場産野菜が多い日は好評で「子どもたちも地域に誇りを持っているのでは」と微笑む。

「命を守る給食のたいせつさを教えたいですね」と栄養士の阿部惠美子さん
|

給食指導はゲーム感覚。体を作るもとやエネルギーになるものなど、今日の食材を分類
|

阿部さんのお話を真剣に聞く3年生の子どもたち
|
この日の献立は、油麩のすまし汁に焼き魚、きんぴらごぼうにデザートのさくらんぼ。
油麩は一関地方の伝統食材で、盆の時期に食べられる。他にも赤荻産ダイコンやインゲン、地元産大豆を使った「大豆工房」の豆腐などもたっぷり入れる。きんぴらごぼうは食感にこだわり生ゴボウとニンジンを使用、調理師の菅原きよ子さんと佐藤和江さんが1時間以上かけて手切りする。調理師の佐藤アツ子さんと阿部さんも加わるが、全校分370食以上の給食は野菜の下処理だけでも並大抵ではない。食材そして手作りへのこだわりを強く感じた。

各学年の給食当番が給食室にやってきた。「3Aです! いただきます!」と元気に挨拶 |

左より、調理師の佐藤和江さん、菅原きよ子さん、佐藤アツ子さん
|

大越留美子さん。産直は6月初旬〜11月末までの毎朝6時30分頃スタート。地域の人に大好評だ
|
赤荻小の取り組みを支える生産者は、地区の中通生産組合女性部。去年の4月から学校そばで「ふれあい産直中通」を行うようになったのをきっかけに、赤荻小へ野菜を供給するようになった。今日のインゲン提供者は組合員の鈴木勝江さん。「新鮮で安全なものを」と、農薬を使わない野菜栽培に取り組んでいる。女性部代表の大越留美子さんも「子どもたちに食べてもらえるのは理屈抜きにうれしい」とにっこり。赤荻小の給食は、作られた土地も、作る人々の顔も見える。

鈴木勝江さん。ひとめぼれほか各種野菜の生産も行っている
|

鈴木勝江さんのさやいんげん畑
|
学校では健康教育にも力を入れており、給食前の校内放送では食材の紹介が行われる。また阿部さんが月毎に各学年を回り、食材の分類などを楽しいゲーム形式で紹介。「食材を目の前にした指導はとても効果的」という。
赤荻小の子どもたちは、毎日の給食を通して地域の個性を学んでいる。

特産のネギ。盆前に1本立ちに植え替え、秋冬にかけ「まがりねぎ」として出荷される
|

赤荻小では米やネギづくりなどの体験学習も行っている
|
|